【CASE1】バイオ系出身・コンサルを希望していた新卒社員が、 中小製造業の金属加工現場に飛び込んだ話

ROOKIES’ PROJECT Case.1では、農学部出身でコンサル志望だった新卒社員・Uさんが、全く未知の金属加工現場に飛び込み、現場の混乱を整理しながら成長していくお話です!この記事を読むことで、以下のようなことがわかります。
①若手社員はどんな流れで仕事をするの?
②未知の領域でどうやってプロジェクトを進めてきたの?
③仕事を達成するのに大事な事って何?
登場人物
Uさん
こんにちは!
サンケイエンジニアリング3年生のUです。大学では農学部に所属し、セルロース分解酵素の研究をしていました。
このお話は、全く畑違いの会社に就職した私が、2年目にして突然、未知の「金属加工の現場」に入り、襲い来る課題を次々と叩き潰しながら成長していく話です。
ついでに、Uさんを未知の現場に誘い込んだ私、「経営企画チーム」と、
経営企画チーム
製造現場Tさん
Uさんに襲いかかる課題の創造主、私達「製造現場」が彼女の成長記に合いの手を入れてまいります。
これはやばい!コミュニケーションの取れない現場
飛び込んだ未知の世界は「コミュニケーションの取れない現場」でした!ちょっと覗いてみましょう。
今、製造現場で何が起きているんですか?!
工具の費用が昨年の10倍もかかっているんですよ!!
何を買ったんですか?
何に使ったんですか?
会社としてはお金を垂れ流しているだけに見えます…これはいつまで続くんですか?残業も増えているようですが、なにが起こっているんですか??
経営企画チーム
製造現場Tさん
うーーーん。
そう言われても、加工する上で必要なモノしか買ってないんですケド?
私達現場としては、最近なんだかメンバーがやたら疲弊している気が…。
そっちの方が気になるかな~~。
なんだかモヤモヤした会話になってますね。
なぜそんな会話になっているんだろう。
疑問に思いつつも、深くに考えずに現場に向かいました。
かくして3か月に渡る迷走の日々が始まるのでした。
すると――――
思ったより課題が次々見つかった!!??
…..加工メンバーの会話を聞いていると、
同じチームなのに、共通言語が無かった
(※全員日本人なのに)
- 同じ単語でも意味が違う
- 同じツールを使っていても、呼称が違う
- そもそも、ツールに名前がない。「アレ取って~」
- 作業名も統一されていない 「アレやって~」
- 会話が感覚中心「もっと大きく!」「大きくとは??」
「工具」「機械」について、良し悪しの基準が不明
人によって違う。責任者の頭の中にはあるけど、他の人は知らない。
「人の行動」について、良し悪しの基準が無い
どの問題も重要そうで、互いに複雑に絡みあっていそうでどれから着手したら良いのかさっぱり分からない…。
というか、どれも悪い状態で、優先順位なんてつけられない!!!
そうは言っても、何か行動を起こさなければならない。
というわけで、工具に着目してみました。
工具に着目してみると
更に混沌とした世界が見えてきました。
- 工具を探してさまよい、加工を始められない作業者達
- やっと始められると思ったら、適切な工具ではなく、まさかの再捜索
- 作業時間が押して、増える残業
- 基準があいまいなため、何度も加工やり直し
- 疲弊していく現場
- 増える出費
これは何とかしないとダメだーーーー!!!
働きやすい現場は、整理整頓から
(1)工具の断捨離
「工具管理」の一歩目として、まず真っ先にやったのは、「工具の断捨離」でした!
なんせ、すごい状況だったんです…

↑ 薄暗い工場の奥にあった棚たちを全部表に出し、(+机の下のビニールに入って転がっていたモノも…)

いるモノと、いらないモノに分ける
工具棚の中に入っている工具類(ざっと数千本…!)、
全て外に引きずり出し、分けます。
・ いらないモノ⇒ 廃棄します
・いるモノ⇒ 整理開始!
サイズ、種類ごとに分類(約1000種類!)
チーム規模で整理していったため、整理の様はまるでテレビ番組の断捨離企画!!
「捨てていい?」と聞くと、「使ってるからダメ!」と返される。
(整理が進まなぁい…泣)
当時はとにかく整理しなければ…!という一心でロボットのごとく淡々と進めましたが、今思い返しても大変な仕事でした…。
これだけで3ヶ月かかりました。
(2)名無しの工具に、名前をつける
整理するからには、工具の名前を知らなくては。
そんなUさんに、さらなる壁が立ちはだかります。
- 工具の大半に、実は名前が無かった。(何…だと…?)
- 購入した後、現場で研いで形状を変えてる!一般名が無い!
- メーカー型式を伝えると、現場「…?」(通用しない!?)
…..そもそも、この工具は何に使うのかしら。。分からん。。。

ここで皆さんに言いたいです。
冒頭の私のプロフィールを思い出していただきたい。
Uさん
私、加工の経験ありませんよ!
専門はバイオです!
Uさん
そもそもこの工具使って何ができるのよ?
わかるわけないじゃん!どうするのよ!!
という状態からスタートしてるんです。
でもやるしかない。工具の使い道を一から教わる。
それでも、このPJを完了させるため、加工チームのリーダーに張り付き加工について教えてもらい、現場で実際に見て触ったりして、加工の原理・原則、一通りの工具の使い方を理解しました。
ここでようやく、現場の人と会話するための、共通言語を取得!
やっと、工具の名づけ大会。
工具の用途が分かったので、やっと名無し工具の名づけに着手できます。
現場の人達と一緒に、一つ一つを取り上げ、「これは【刃先〇〇度の△△】と名づけよう」を繰り返して行きます。
そう言えばUさん、毎日毎日現場に行って、いつもTさんと喋ってたよね。。。
経営企画チーム
Uさん
はい!
慣れるまでかなり苦労しましたが、何とか2か月で頭に叩き込みました…!!
そう言えば、長~~い工具リストが壁にドデンと貼ってあったよね。。。
経営企画チーム
Uさん
そうでしたね、長すぎて風でなびいてましたね。

(3)仕上げ
さて、いよいよ仕上げに入ります。
①工具をカテゴリで分けた。
・加工する機械
・サイズ
・加工する材料の材質
・使用用途 など
②カテゴリごとのエリア(置き場所)を決めた。

③必要なものだけを選別した。
④各工具の個数を数えた(合計3,800個!!)。
⑤置き場所(引き出し)に番号・名前をつけた。
最後に!設備に付いている工具を数える
なんと!夏休み前後一週間、加工現場の稼働を止めました!!(このために一カ月前から打ち合わせをしました)
サンケイエンジニアリング技術センター始まって以来の、30年目の大掃除大会、無事に終了!!
気軽に深淵を覗き込んでからまさかの8か月後、ようやく全ての工具の名前を決め、工具棚に収めました。
長い戦いでした…。
製造現場Tさん
助かったよ~~。30年間のツケが解消された!
ずっと気になっていたし、正直やりづらかったんだよね
何とか夏休み前にひと段落してよかったね。
経営企画チーム
Uさん
あやうく夏休みが無くなるかと思いました。
さらに美しい現場へ
その後どうなったかというと…
必要な工具が分かりやすく収納されてるから、探し回らなくて済む!取り出すのが楽!

取り出した工具を使って、ちゃんとモノがつくれる!
「あれ?!この工具、もしかして寿命を終えてた??」
「品質ボロボロ……」ということが無いからです。
製造現場Tさん
出した工具がすぐ使える!
嬉しい!!
パソコンから在庫が見られるから、準備がラク!いちいち現場で、必要な工具があるか?ないか?探さずに済みます。頭を悩ませる時間が減り、前より仕事をしやすくなったそうです!

棚に行かずに、状況が分かります。
工具の整理整頓ができたことで、会話のモヤモヤが消え、生産的な会話ができるベースができました。
Uさん
よかったーーー!!めでたしめでたし!
Uさん
それにしてもここまでの道のり、本当に長かった…整理整頓だけでこんなに時間がかかるなんて!
Uさん、実際やってどうでしたか?
経営企画チーム
Uさん
コンサル志望してたんですが。。。正直最初はコンサルに全く関係ないじゃん!と思ってました。
Uさん
でも、コンサルの仕事って、全く未知の他社・他部門に入り込んで改善をすることなんですよね…。
・改善現場の言語を知る、理解する
・現場の人達と会話する
・現場を味方につける
・カイゼンの内容は意外と簡単だった
・簡単なことを最後までやりつづけることが大変だった
Uさん
今回のプロジェクトを通じて、私は気付かぬうちにコンサルの基礎を体感・体験していたみたいです。
色々ありましたが、終わってみると、
「知らないこと、経験がないことでも、やればできるんだな!」
「大変だったけど、楽しかったな!」
と思える8か月でした!!
次はなにやろうかなあ・・・っと
次にやりたいことは決めてありま~す!!
次回へ続く…
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待って~!まだ課題は残ってますよ~!
経営企画チーム
製造現場Tさん
工具はわかるようになったけど、運用に手間がかかる。。。
そうなんです!
「効率化」と言っておいて、管理に手間暇かけていては本末転倒。。。
ゆくゆくは運用を全て自動化したい!
そして画面ももっともっと見やすくしたい!
こんな感じでこれから取り組むべき課題は多いけれど、創業50年目、工場創設30年目にして始めて工具の運用ルールができました。
企業の課題は尽きることないのです。。。