【#2】「なぜ?」があふれる楽しさ。「現地・現物」の一歩先で見つけたもの
※サムネイル写真:現地で会ったカンボジアの皆様
カンボジアに到着してすぐ、私は「自分の足で現地に立ち、自分の目で見る」という「現地・現物」の大切さを、身をもって実感しました。
しかし、それでも、見るだけではわからないことが、たくさんありました。「いったい、この街の人たちは、どんな一日を、どんな思いで過ごしているんだろう。」見れば見るほど、疑問は増えていきます。「現地・現物」は、あくまで入口にすぎない。だんだんと、そう思うようになりました。
そこで私は、もう一歩踏み込んで、現地で生活する人たちに、直接聞いてみることにしました。
笑顔のあいさつが、最初の一歩をくれた
とはいえ、「人に聞く」といっても、それは簡単なことではありませんでした。
はじめて訪れる国、はじめて出会うカンボジアの人たちが、どんな人柄なのか、見当もつかなかったからです。あれこれ質問して、いやな顔をされたらどうしよう。そう思うと、正直、少し怖さもありました。
その怖さをやわらげてくれたのが、あいさつでした。
私が泊まったのは、カンボジアの若者たちに職業訓練を行う施設の一角でした。そこにはなんと、日本語を学ぶ訓練生たちがいたのです。彼らは、敷地内ですれ違うたびに、習いたての日本語で「おはようございます!」「おつかれさまです!」と、満面の笑みで声をかけてくれました。
さらに、街のお店でも、こちらから笑顔であいさつをすれば、みんな、気持ちよく笑顔を返してくれました。
そんな笑顔に触れているうちに、こわさは消えていきました。あいさつを通じて伝わってきた、カンボジアの人たちのあたたかさ。こちらが興味をもって尋ねれば、きっと答えてくれる。カンボジアの人たちの笑顔が、私の背中を押してくれました。
そして、気になったことを、どんどん聞いてみることにしました。
ひとつの「なぜ?」が、次の「なぜ?」を呼ぶ
実は、私のそばには、心強い存在がいました。日本語を流暢に話す、カンボジア人の通訳・Pさんです。この国に生まれ、この国で暮らしてきた人。カンボジアの歴史から道ばたの木の名前まで、何を聞いても、よどみなく答えが返ってきます。このPさんが、私の「なぜ?」に、付き合ってくれました。
たとえば、こんなことがありました。
道路を、ワイシャツ姿の若者たちが、同じ方向へ一斉にバイクで駆けていく。その光景を目にして、ふと気になりました。あの人たちは、どこへ向かうのだろう。

Pさんに尋ねると、「銀行に勤めに行くのですよ」との答え。銀行は、若者にとって、いわば「憧れの就職先」なのだそうです。大学を出た人は、こぞって銀行を目指すのだとか。
——では、カンボジアの若者は、みんなその銀行を目指して、大学へ進むのだろうか。そう思って、また聞いてみました。すると、「そうとも限りません」と。裕福でない家庭の若者は、大学を諦めて働きに出ることも多いといいます。
——では、一度働きに出た人は、そこで学びの道を閉ざされてしまうのだろうか。気になって、さらに尋ねました。ここでPさんが教えてくれたのが、夜間大学の存在でした。プノンペンには、夜に通える大学が数多くあり、昼は働きながら、夜に学ぶことができるそうです。若いころに学べなかった人も、あとから大学を出て、新たな道を開いていける。内戦の時代に十分な教育を受けられなかった大人が、いま学び直しに通うことも、少なくないといいます。
たったひとつの通勤風景の「なぜ?」から、この国の就職や教育のかたちが、少しずつ姿をあらわしていく。ひとつ聞けば、その奥にまた、知らない世界が顔をのぞかせる。聞けば聞くほど、「もっと知りたい」という気持ちが、ふくらんでいきました。
「見る」の先にある、好奇心
こうして人に聞いて回った数日で、感じたことがあります。
ひとつの「なぜ?」から、次の「なぜ?」が湧いてくる。それを聞くと、また次が顔を出す。日本に帰ったら、カンボジアの教育制度を調べてみよう。経済の仕組みについても、もっと勉強したい。知りたい気持ちが、次々と湧いてきたのです。
知らない国、はじめて触れるもの。未知のものを前にすると、「なぜ?」は、自然とあふれてきます。そして何より、そのあふれてくる感じが、楽しい。私はまだ、カンボジアのほんの入口に立っただけですが、この「もっと知りたい」が止まらなくなった状態こそが、深掘りの第一歩なのかもしれません。
これは、カンボジア出張に限った話ではありません。日々の仕事でも、同じはずです。現場に足を運び、モノを見て、それで終わらせない。そこで湧いた「なぜ?」を、人に聞いてみる。そうして生まれる好奇心を、これからも大切にしていきたい。
さらにこれは、仕事だけではないかもしれません。どんどんあふれてくる「なぜ?」。この好奇心こそが、人生を楽しむ鍵なのではないか。カンボジアで過ごした数日は、そんなことまで、少しだけ思わせてくれました。

※写真:通訳のPさんを通して、カンボジアの方にお話しを聞きました
次回、この国の歴史に向き合います
カンボジアのいまを生きる人たちについて、たくさんのことを聞きました。
けれど、あたたかい笑顔で迎えてくれたその人たちが歩んできた道の奥には、まだ、私の知らない、忘れてはならない過去もあります。次回は、カンボジアが歩んできた歴史に、静かに向き合ってみたいと思います。